以前、こんなことがありました。

ある中古戸建を販売するために、その家でオープンハウスをしました。
前々日からチラシを入れて反響を促す工夫をし、前日にはそのオープンハウスの準備のためにのぼりを立てて看板を設置し、家の中は各部屋に説明のための資料を飾り付けたりと忙しくしていました。

そのお客様から電話がかかってきたのは、材料の買い出しのため準備中のその家から少し離れた時でした。

「もしもし、○○不動産ですか?チラシを見たのですが、オープンハウスの前日ですけど中って見られますか?」
(おぉ、早速の反響かぁ!)
「あ、はい。いいですよ!ただ、私今ちょっと現場から離れていまして、すぐには戻りますが、10~20分後ぐらいではどうでしょうか?」
「わかりました!では、その頃に伺います!」

電話を切って、嬉しくなりそそくさと買い物を済ませて現場へと戻りました。

ほどなくして、さっき電話をくれたであろうお客様がやって来られました。
少し年配のご夫婦で、聞けば息子の家にという目的でした。

「いや、すみません。チラシを見てこれは!と思い早々にやってきまして。何かこの物件に惹かれるものを感じたものですから!」

こういう時には何も細かい営業手段は必要ありません。聞かれることに応えておけばたいがいうまく話しは進んでいきます。
但し、肝心な息子さん本人が気に入らなければ話は前に進みませんので、

「ありがとうございます。それだけお気に入って頂けると私も嬉しいです。でも、当の息子さんご本人に見て頂けるようにして頂けませんか?」
と言いますと、

「わかっています。もう息子にも連絡はしていますので、明日にでもこちらへ連れてきます。」
とのこと。明日のアポイントを取ってオープンハウスの準備をし、取り敢えずは一旦引き上げることにしました。
息子さんを引き連れてその家に来て頂いたのは、まだオープンハウスの開始時間の少し前でしたが、

「早く来ないと他に売れてしまうのが怖かったので!」と・・・。
(これはすごくいい反響だ!後は息子さんの反応だが、どうだろう?)

「早速のご来場ありがとうございます。こちらが昨日話されていた息子さんですね?いかがですか?」
最後の「いかがですか?」は息子さんに聞いた言葉です。

「いや、父が勧めるので来てみましたが、部屋数も大きさも価格もいいですね!僕は今婚約しているので、一度婚約者も連れてきます!」とこれまた申し分のない反応を頂くことが出来ました。

リフォームをして1回目のオープンハウスとしては上々の出来だろう!
それから3日後には婚約者も来て買付証まで頂く運びとなり、契約日も設定しました。
住宅ローンも勤め先は病院で(事務でしたが)勤務年数もあり年収もOK、これで決まらない材料はどこにもありませんでした。婚約者の親せきが来るまでは・・・。

婚約者の親せきというのが不動産会社(小さい個人経営)の社長で、婚約者の叔父に当たる人でした。
婚約者の親せきというのが不動産会社(小さい個人経営)の社長で、婚約者の叔父に当たる人でした

その親せきと婚約者の両親とだけが、
「家を見せてほしい。」ということなので、約束した日に出向いて見てもらった時に、こんなことを言ってきました。

「この家を購入するかどうかは姪とその婚約者が決めることだけれども、住宅ローンだけはわしの知り合いの○○銀行の○○支店を通してもらえないか?」・・・と・・・。

「???私の方では○○銀行はご紹介させて頂いておりますが、決められるのはご本人様ですので、どちらでご融資を受けられても差し支えありませんが?」と言うと、

「なんとか君からも説得してもらえないか?」

「いや、ご本人様がお決めになられることなので、私には説得など出来ません。」
こういうやり取りがあり、取り敢えずお引き取り願いました。

その後、この叔父とご本人様との間でいざこざがあったようでしたが、契約日前日(昼間)にご本人の両親に呼び出され、
「いろいろご心配をお掛けしましたが、ご契約させて頂きますので!」との確約を頂き、その日は別れることとなりました。

その夜のことです。
いきなり本人の父親の方から電話がかかってきました。

「○○さん、すみません。明日契約出来なくなりました。」
「え?どういうことですか?」
「息子が婚約を破棄したのです。」
「え~?」
「あれから、父親である私も向うの叔父と話をしましたが、全くかみ合わずもめまして、息子も婚約者と話をしましたが、逆に『それなら、もういい!あなたとはやっていけない!』となってしまったみたいで、お恥ずかしい話ですが、婚約そのものが解消されてしまったのです。」
「へ・・・?な、な、なんと・・?」

その後の言葉が出てきません。

とにかく、その叔父に住宅ローンのあっせんを強要されたことから、この話はガタガタに崩されてしまいました。

私の経験の中であんなことは初めてでしたが、二度と経験したくない一コマになりました。