昔、働いていた不動産会社での出来事だ。

そこでは、建築の営業と並行して不動産の仲介も行っていましたが、ある日会社で社長に依頼を受けた。
「○○君、○○町で戸建の仲介の依頼が出てきたのだが、ちょっと見てきてくれないか?」
「あ、はい!いいですよ!場所はどこですか?」
「○○町の交番が建っている海沿いの道を右に入ってここを曲がり、少し道が狭くなっているところを左へ。そうすると赤い屋根の平屋建ての建物が見えてくるので、その家です。」
地図を見ながらの説明だったので、ほぼ場所はわかった。この辺りは以前建築のお客様も担当した分譲地近くで、土地感のある場所だったので、後は現地で探すような感じで見に行くことになった。
その時、社長が少しいたずらっぽく笑った気がしたが、あまり気にせず現地へと足を運ぶことになった。

会社から約30分車で走ると、爽やかな風が吹く海の近くの一直線の道路に差し掛かったが、目的地はもう少し先。
トイレ休憩を兼ねて少し時間潰しをするために、砂浜沿いにある無料駐車場に車を停めて海を眺めることにした。

この砂浜は約4km続くとか・・・。見ていても壮大な景色だ。
(そう言えば、この砂浜は毎年何人かの人が溺れて亡くなっているみたいだなぁ~。聞けば人工の砂浜で沖に向かうと急にドン深になっているらしく、遊泳禁止を知らずに泳ぎに出た人が戻ってくる時に粒の大きい砂利に足や手を取られて溺れてしまうというのがその理由らしいなぁ。)

そんなことを考えながら煙草を吸ってポツリポツリといる釣り人の竿の曲がり具合を見ながら少し時間を潰していた。

時間も少し経ったので、ボチボチと現場に向かうことにした。ここからは、10分ほどで着くはずなので、
予定では15:20分ぐらいには着きそうだった。
現場に着くと、ポケットから鍵を出して玄関の前に立った。
(そう言えばこの家は競売で競り落とされた物件だと聞いていたが、買ってすぐにもう売るのか・・?)

鍵を開けて中に入ると、雨戸が閉まっているせいもあり、中は真っ暗。リビングに入るドアを開けて・・・手探りで窓に近づき、まずは窓を開け、次に雨戸を・・・ガラガラと音を立てて雨戸が開くと、部屋が明るくなって全体が見渡せる。プーンとカビ臭い匂いがし、中をぐるりと一周見渡した。

物件の下見ではいい所よりもダメな所を見つけるように心掛けているので、「どこか問題は無かろうか・・・??
ん???なんじゃこりゃ?」
とんでもないものを発見してしまった。

平屋建ての中の和室の入口の一番大事な場所にいわゆる大黒柱が立っているが
平屋建ての中の和室の入口の一番大事な場所にいわゆる大黒柱が立っているが、その大黒柱のど真ん中に
「呪」という漢字が書いてある。ん?いや書いてあるだけではない。彫ってある。しかもかなり深く彫り込んであって、赤い色で文字が塗られている。「呪い」ではない。「呪」だけ。背筋がゾ~っとなったが、これを見た瞬間に社長がいたずらっぽく笑った訳が理解出来た。
それと、せっかく競売で落札したばかりなのにすぐに手放したいことも納得出来る。
競売でこの家を取られた人の想いがこの「呪」という文字に埋め込まれているようで・・・。
(でもこれじゃあ、なかなか売れねぇな。)

別に幽霊が出てくる話ではないが、非常に気持ちの悪い経験をした。

因みに私がその会社を辞めるまでにその家が売れたとは聞かれなかった。