<巣立ち>
子供も3人に増え、間借りしている実家も手狭になってきた。
孫が可愛いとは言え、両親の「そろそろ出ていけ」というオーラも
ひしひしと伝わる。

色々物件を見ていくうちに、
「やっぱり子供のためを考えると戸建てを建てたいよね」
という話になり、戸建てを検討することにした。

土地も建物も購入する必要があるので金銭面が心配であったが、
お互いの両親も援助をしてくれるとのこと。

その日から土地探しが始まった。
<着工>
お互いの両親も絡む話なので、色々な意見が交錯した・・・。

そのおかげで、半年以上の時間がかかったが、
ついに目当ての場所で土地を契約することが出来た。

そして土地を仲介してくれた不動産会社の助けもあり、
施工会社も決まり、3階建ての戸建ての設計も無事に終えた。

そして、いよいよ着工の日が訪れた。

少しずつ出来てくる建物であったが、
今住んでいる場所から離れているので、
月に1回程度しか見には行けなかった。

なにやら近隣と少々揉めていると耳にしたが、
その時は「まぁ良くある話なんだろうな」
と軽く受け止めていた。

しかし、まさかあんな大事になるとは・・・。
<近隣からのクレーム>
<近隣からのクレーム>
実は購入した土地のすぐ目の前がお寺であった。
しかし、お墓などはなく、建物と屋敷があっただけなので、
逆に「建物が建つ心配がない」と安心していた。

しかし、そこで不動産会社から一本の電話が入る。

「実は隣のお寺の方からクレームを受けておりまして、
施工計画変更にも関わることなので会ってお話をしたいです。」

揉めているとは聞いていたが、
まさか施工計画が変わるほどとは・・・。

週末、お互いの両親も引き連れて現場へと向かった。

どうやら土地を仲介するときに、
このお寺の所有者から色々と要望を受けていたようだ。

「由緒あるお寺で、檀家や一般の方も出入りがするので、
建物を建てるのは良いが、それなりの配慮をしてほしい。
具体的には、3階部分からはお寺が丸見えなので、曇りガラスにすること。
そして、塀の部分は高くしてほしい。」
などプライバシーに配慮した内容だ。
<誰が悪いのか>
しかし、そんな事を私達は全く聞いていないし、
不動産会社も施工会社も全く知らないという事態であった。

「お寺がイチャモンつけているだけじゃないのか?」
と思っていた。

すると、まさにお寺との話を終えた担当者が帰ってきた。

狼狽した面持ちで重い口を開くと・・・

どうやらお寺の方は、不動産会社の一人に話をしていたようだ。

しかしその話を聞いたという担当者は既に辞めており、
その事を会社に話をしていなかったそうだ。

そうなると状況は変わり、
全ては不動産会社の責任になる。

しかも、お寺の所有者は、
その時の会話をボイスレコーダーで録音をしていたのだ。

その内容を聞く限り、
確かに担当者に先ほどの話をしており、
担当者も口頭ではあるが、
「承知しました。そのように施工するよう伝えます」と
明確に了承をしている。

それを聞いた私の両親は、
「お寺の方は間違ったことを言っていない。
これから何十年も付き合う近所の方なので揉めたくない。
但し、責任はあんたらにあるので、全てあなた方の責任で対処してください」
と厳しい一言。こういう時の父は本当に頼りになる。

結局施工計画は見直され、
当然費用が上がった分は不動産会社の負担になった。
曇りガラスに変更など、私たちも被害を受けた分、
多少の割引をもって話は解決をした。

今では、お寺の方とは笑い話になっているが、
逆にあのボイスレコーダーがなかったら
どうなっていたことか。

ご近所さんとギクシャクしたまま過ごしていたかと思うと、
非常に怖い話である。