<脱出したい>
社会人5年目。
今のところ結婚する気もないし、
もっと仕事に没頭したいと思っていた。

今の家は埼玉県の大宮より更に奥の実家住まいなので、
渋谷駅にある会社までは時間がかかる。

仕事が終わらなく、会社に泊まる事もしばしばある。

そんな環境も変えたく思い、
今さらながら一人暮らしをしようと決意。

色々と情報収集をしていくうちに、
賃貸だけではなく、分譲も良いのではないかと思い始めてきた。

親も不動産関係の仕事をしていたので、
若くはあるが、購入には反対はしなかった。

<大事な事>
マンションを探す上で色々物件を見た結論だが、
「渋谷から近い×商業施設が多い×眺望が良い」
という条件が譲れないと分かった。

特に眺望に関しては、実家の目の前に川があるので、
目の前が開けていないと、何か落ち着かない気持ちになる。

もちろん都心なので、目の前に何もないという事は難しいが、
せめて圧迫感を感じないくらいの眺望は欲しい。

<出会い>
そんな中、駅徒歩10分以上ではあるが、
手頃な価格の1LDKマンションが見つかった。

渋谷へも2駅で、タクシーでも1000円程度で帰れる。

周りに商業施設も多い。

肝心の眺望は・・・・

「こちらの写真がこの部屋からの想定眺望です。」
営業担当者が写真を見せてくれた。

そこには建設現場のクレーンで撮影したと言う、
私の希望している高さからの眺望写真があった。

道路を挟んで目の前にマンションがあるが、
大きな道路で、更にマンションも道路際から下がっているので、
思ったよりも圧迫感を感じない。

そろそろ物件巡りも疲れてきたところだったので、
良い出会いだと思い、前向きに検討を始めた。

<太鼓判>
決めてしまえば早いもので、
その後の手続きはあっという間であった。

「こんな簡単に大きな買い物をして良いのかな」
とも思ったが、不動産業界に身を置いていた両親からも太鼓判を貰っていたので、
比較的安心して決める事ができた。

いよいよあの通勤時間から解放される・・・
という思いが不安を打ち消し、
日が経つごとに楽しみになってきた。

<ついに>
そして契約から半年以上が経ち、
ついに実際の部屋を見られる日がやってきた。

外観のデザインも格好良く、
「いよいよこのマンションに住めるんだ」
とワクワクが止まらない程嬉しかった。

営業担当者にアテンドされ、
10階にある自分の部屋に着いた。

部屋に入ると新築の匂いがした。

そして真っ先に目当ての眺望を見るために、
リビングへと足を運ぶ。

<予想外>
<予想外>
「ん・・・・????」

思っていた景色と違う・・・。
目の前の建物が近く感じる・・・。

「ちょっ・・・ちょっとここの眺望写真見せてください」

営業担当者にはまさかの要望だったらしく、
「すみません、今持っていないのですぐに取ってきます」
と事務所に戻っていった。

程なくして戻ってきた営業担当者。
そして渡された資料に目を通す。

「やっぱり写真と違う。この写真よりも目の前のマンション近いですよね?」
と営業担当者に言うが
「いや、そんなに変わらないと思うのですが・・・。
それにこの写真はあくまで想定なので・・。」
という予想以上に淡泊な答えが返ってきた。

「しまった・・・。親も連れて来れば良かった・・・。
プロの親がいれば応戦してくれたかもしれない・・・。」
と思いながらも
「いや、違いますよ・・・。良く見てください」
と食い下がるも担当者の返答は変わらずであった。

<結末>
確かに、写真は合成をしたり脚色をしたりはしていないようだ。
但し写真はサイズが小さいので、
実際のサイズで見てみると印象はかなり違うようだ・・・。

冷静に考えると担当者に嘘はないし、悪気もない。

勝手に舞い上がっていた自分が悪いと
(半ば無理やり)結論付け、家へと帰っていった。

両親に事情を話すと最初は不動産会社に怒っていたが、
良く話をしてみると、やはり私の注意不足である・・・
と途中から説教に変わっていた。

その後、今でもそのマンションに住んでいるが、
景色も慣れ、最初の頃の気持ちはどこへやら。

住めば都とは言うが、もう少し考えるべきだったとは反省しています。